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よくわかる北朝鮮旅行2016年5月 by 神谷奏六

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北朝鮮がわかるオススメ本 「生きるための選択 ―少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った(パク・ヨンミ著)」

今まで数々の北朝鮮関連の書籍を読んできた中で、北朝鮮のことを理解するにあたって、ベストだと思うのがこの「生きるための選択 ―少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った」です。

何がどうよかったかを解説します。



1.北朝鮮の農民の生活がわかる

北朝鮮に旅行に行く場合、ほとんどは平壌市内の観光です。

平壌に住んでいる人は身分制度の最上級の人しかいませんので、平壌の人と話をしても農村にいる人の生活はつかめません。

たとえば、平壌在住のガイドに北朝鮮の農民について話を聞いても、実際のところがわかることはありません。

平壌のガイドは北朝鮮の農村の悲劇的な実態について話してくれることはありませんでした。
話し振りや表情を見ている限り、隠しているというのではなく、本当に知らない(つまりガイドは隠している側ではなく、隠されている側)のだと思います。

一方で、農村に行っても、農業の団体の代表の話を聞いたり、質疑応答する機会はありますが、いち農民と深く話したり、生活の実態を見たりすることはほとんどできません。

なので、予備知識なしで北朝鮮の農村を見て回っても、騙されるか、あるいは疑いすぎて本当のところがわからないまま終わるか、いずれかだと思います。


その点、この本は北朝鮮の農村の実態について、これでもかというくらいに生々しく記載されています。

学校に行く途中に道ばたに死体が転がっているのを毎日のように見ていたとか、真冬で電力不足の時期などは食べ物も暖をとる方法もないから山で虫を捕まえて食べてあとはお姉ちゃんとくっついてただ耐えていたとか、親戚しか頼るものがない中で父親が当局に逮捕されて親戚からも村八分のようになって死にそうになったとか、そんな話が満載です。





2.北朝鮮の人の考え方がわかる

北朝鮮に旅行に行くと、国が金日成・金正日をひたすら尊敬させようとしているというのはわかります。

そして、一見、国民が本当に尊敬しているようにも見えます。

でも、本当のところ、自分で金日成の人となりを判断して尊敬しているのか、洗脳されてそうしているのか、本当はやりたくないけどやらないと捕まるからしかたなく肖像画に頭を下げているのか、そのあたりはわかりません。

その点、この本では北朝鮮の大人やこどもがどのような環境と成長過程を経て、尊敬するに至っているのかがわかります。

著者のパク・ヨンミ氏は現在20代前半ですが、少なくともそれより上の世代は、金日成・金正日を尊敬させるためには完璧と言えるような教育を受け、ほとんどの人は心の底から尊敬しているようです。

金日成がいかに朝鮮人民を幸せにするために努力し、成果を出したか、今、生きることが出来ているのはいかに金日成のおかげか、というのを伝える教育がどんなものだったのか、というのが描かれています。




3.北朝鮮の政策の矛盾がわかる

北朝鮮の平壌在住のガイドに話を聞くと、北朝鮮の政策の素晴らしさについて解説を受けます。

その中にたとえば、こんなものがあります。

「北朝鮮は税金がない。完全に無税である。」
「北朝鮮は医療費が無料である。」
「北朝鮮は農民の年貢もない。多く採れたら国に納めるし、少なければ自分の食べる分を確保だけして国には納めなくてよい。」

そして、これは事実であるようです。

ところが、これだけ聞くと、北朝鮮の飢餓・貧困・医療問題の実態と辻褄があいません。

その点、この本はこの政策がいかに機能していないかがなまなましく描いてあります。

税金はないけどそれ以上に仕事がないから身分制度の最上級の都市部在住者以外はみんな貧しいとか、医療費は無料でも医者が少ないから結局医者に賄賂を渡さないと見てもらえないとか、医療費は無料でも注射針が足りないから使い回しで伝染病が広がりまくっているとか、年貢もないけどそれ以上に収穫がないから農民は自分のたべる分がそもそもないとか、そんな話が書いてあります。




4.脱北者の壮絶な苦労がわかる

日本などにいて北朝鮮の貧困の実態を見ていると、

「俺なら絶対ソッコー脱北するわー。」

とか思うときがあります。

しかし、当然ですが、脱北はそんな簡単ではありません。

国境を越えるだけでも大変ですがその後が壮絶だ、と聞きます。
しかし、本当のところがわからないのです。



その点、この本は自身が脱北した際の一連の苦労がすべて生々しく書かれています。

脱北に必要な協力者を見つける苦労、脱北に反対する身内を押し切る苦労、真冬に極寒の川を歩いて越える苦労、中国に渡ったあと繰り返され続けるレイプと売春の中を生きる苦労、中国に渡ったあと家族バラバラに売られてしまってそこから自力で再会する苦労、ゴビ砂漠をあるいてモンゴル兵に捕まってそこから韓国にたどり着く苦労、韓国に渡ったあと概念すら知らなかったATMやショッピングモールや携帯電話などを使いこなして生活する苦労、自由と競争の社会にいきなり放り込まれる苦労・・・。

脱北ということだけでなく、女性として生きること、自由に生きること、学ぶことなどについても考えを深めるきっかけになります。



世界15カ国で翻訳されたベストセラーであり、2015年11月に出た本ですので、情報も新しい情報です。

北朝鮮旅行に行く人には一番オススメの書籍ですし、「小説より奇なり」なノンフィクションとして、行かない人にもおすすめです。
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