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よくわかる北朝鮮旅行2016年5月 by 神谷奏六

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【まとめ】これだけ読めば全てわかる、北朝鮮旅行の全体の流れ

今回の北朝鮮旅行の全体の流れを、旅行記としてこのページにまとめます。
2016年5月現在の手続きであり、手順やルールは変わることがあるそうです。





1.まず、北朝鮮旅行を取り扱っている旅行代理店に問い合わせする。

日本人が北朝鮮旅行に行くは、北朝鮮国営の旅行会社である「朝鮮国際旅行社」という旅行会社に申し込むか、北朝鮮政府が認めた国際交流大使になるしか方法がありません。

日本の有名人で北朝鮮によく行っている人は、北朝鮮の「対外文化交流協力委員会」という機関が指定した国際交流大使になっている人もいます。
江頭2:50氏などはよく北朝鮮に行っていることで有名ですが、朝鮮国際旅行社の人いわく「江頭氏の申し込みは見たことがない」と言っていたのでどうやらこれで行っていると思われます。

しかし、普通のほとんどの日本人はこの「対外文化交流協力委員会」にの大使に指定してもらうことはありませんので、そうでなければ朝鮮国際旅行社に申し込むことになります。

朝鮮国際旅行社のマイクロバス


北朝鮮にある朝鮮国際旅行社に申し込むには、

(1)朝鮮国際旅行社の海外支社に申し込む
(2)朝鮮国際旅行社に申し込みをしてくれる旅行会社(代理店)に申し込む

の2つの方法があります。
私たちは(2)で申し込みました。

私たちが申し込んだ会社は中国の旅行代理店でしたが、(2)の代理店は日本にもありますので、日本の代理店に申し込むことも可能です。

中国の代理店は大連富麗華国際旅行社、日本の代理店は中外旅行社、KJナビツアーズ、スリーオーセブンインターナショナル、シルクロードトラベルなどの会社があります。

大連富麗華国際旅行社、中外旅行社は北朝鮮旅行者の中ではメジャーな代理店のようですが、スリーオーセブンインターナショナルから申し込んだ人は「この旅行社から申し込んだ人は珍しいですね。」と言われていました。

北朝鮮旅行を取り扱う旅行会社の選び方と、問い合わせ方法はコチラ


旅行社を選んだら、メールで問い合わせをし、日程、行程などを決めます。

私たちがやりとりした旅行代理店は、中国にある大連富麗華国際旅行社という会社でしたが、メールを担当してくれた人は日本語ばっちりで、かなりスムーズにメールのやりとりができました。

私たちのリクエストは「北朝鮮の歴史や、金日成・金正日の両氏のことがわかるスポットを多めに」というリクエストでした。

これに対して返信で行程の提案が来ます。

来た提案に対して、更なるリクエストをこちらから返信し、修正した提案をもらい・・・というメールのやりとりをして、「これでOK」と思える行程が提示されたら、「これでお願いします。」とメールします。

すると、ビザ申請の手続きについて代理店から連絡があります。
その内容を確認し、代理店から指示された必要な情報をメールで送付します。

私は北朝鮮と同じく旅行で行くのにビザが必要なロシアにも行ったことがありますが、ロシアはパスポートの原本を持って東京か大阪にあるロシア大使館に行かなければビザがもらえないのですが、それと比べると北朝鮮のビザ取得はメールでデータを送るだけなのでめちゃくちゃ楽でした。

顔写真や住所・年齢・職業などの情報をメールで送信しました。

北朝鮮旅行は、マスコミ関係者やその親族は専用のビザが必要なので、私たちが申し込んだルートだとビザが出ないことがあるそうです。

理由は「過去にマスコミ関係者が、北朝鮮国内を無断で撮影し、無断でテレビ放送したことがあり、それに金正日が激怒したから。」などの噂がありますが、詳細はわかりません。

私たちはマスコミ関係者ではないので、すぐにビザがおりました。



2.次に、ビザの申し込みをする。

一週間ほど経って、北朝鮮政府から旅行代理店に返答が来ます。

私たちはOKとのことで旅行代理店から連絡があったので、旅費とビザ申請費を旅行代理店に振り込みました。
これで、北朝鮮の入国が認められたことになります。

北朝鮮ビザ申請の手順はコチラ



3.そして、旅行の準備をする。

ビザの申請が通ったタイミングで、旅行会社から北朝鮮旅行の注意事項について連絡があります。

持ち込めないものの注意点、服装の注意点、写真撮影に関する注意点などワード2枚分くらいびっしり書いてあります。



これを読んで持っていくものの準備をします。

持ち込めないものは

・海外(北朝鮮以外)の街や、海外の人のくらしの様子がわかる写真・動画
 (パソコンやスマホに保存して持ち込むのもNG)
・北朝鮮について書かれた本
・双眼鏡、150mm以上の一眼カメラ
・韓国ウォン

などがあります。

また、反米思想が強いので、ジーパンを履いての入国も遠慮するよう言われます。

旅行会社からもらった注意事項は、コチラの記事の後半部分をご覧ください

念のため、ジャケット着用していきました


普段旅行に行く際に持っていっているものを持って行けばよいのですが、この他に、特に北朝鮮旅行の場合は必ず持って行ったほうがいいと思うものを2つ挙げると、

(1)乗り換えの中国と北朝鮮の両方で確実に使える「人民元」
(2)本(電子書籍、オーディオブック含む)

かと思います。

北朝鮮への入口は中国経由になる場合がほとんどなのと、北朝鮮で細かい買い物をしたくなることもあるかと思いますので、事前に中国と北朝鮮の両方で使える通貨である人民元を用意しておくと便利です。

あとは、北朝鮮ではホテルの外に自由に出歩けないので、朝と夜、ヒマになったときのために本を持って行くとよいです。

事前申請すればホテルでインターネットは使えると連絡があったのですが、2GBで300ユーロと超高額ですので、それを払わない限り、インターネットにはつながりません。

つまり、夜などは北朝鮮のテレビを見るなど以外、部屋ですることがなく、超ヒマです。

私たちはKindleに大量に落として持って行きました。


また、ネットで情報を探していると「北朝鮮には持ち込めない」という説があるものは色々ありますが、今はスマホ、デジカメ、パソコンなども持ち込めます。

この他は季節によっては羽織り・サングラス、デジカメのSDカードの予備、現地ガイドへのお土産、寝台列車でくつろぐグッズなどを持って行くと重宝するかもしれません。

北朝鮮旅行の持ち物はコチラ



また、北朝鮮への持ち物を考える際には、北朝鮮の文化や社会情勢、歴史背景、現地の人の心情についても気を配る必要があります。

また、何も知らずにぼーっと観光に行くのではなく、北朝鮮はどのような歴史を辿って、その過程で街がどのように変わり、どんな文化が作られて、今の北朝鮮ができたのか、あたりを頭に入れて行くと、何も知らずに街を眺めたりガイドの話を聞いているよりも、北朝鮮をよく理解しながら観光をを楽しむことができます。

なので、出発までに北朝鮮のことがわかる本を何冊か読んで行くのがオススメです。

また、北朝鮮のガイドの話は政府が決めた内容です。

何も事前の知識がないまま北朝鮮のガイドの話を聞くと、騙されてしまうかもしれません。

また、事前知識がないまま「騙されているのでは?」と思ってしまっては、せっかくのガイドの説明が楽しめません。

1.朝鮮戦争について
2.金日成のやってきたこと
3.北朝鮮の都市部と農村の実態

の3点くらいは事前に頭に入れておくと、ガイドの話の正しい点、ガイドの話の誤っている点、ガイドの話が誤っているというわけではないが表現方法があまり適切とは言えない点、などに気づけて楽しめます。

私のオススメは、上記1.2.については池上彰氏の「そうだったのか!朝鮮半島」、3.については脱北者であるパクヨンミ氏の「生きるための選択」です。

これらの本の詳細や、その他のオススメ本は以下にまとめています。

北朝鮮のことを手早く理解するためのオススメ書籍はコチラ




また、北朝鮮への入国口である丹東への航空券、丹東やトランジットの街での宿泊ホテルなどを申し込みます。

だいたいの人は日本から中国へ飛行機で行き、中国(北京、丹東、瀋陽など北朝鮮行きの便がある街)で北朝鮮に入る前に1泊、北朝鮮から出国した日に1泊して、日本へ飛行機で帰る、という行程かと思います。

私たちは、この航空券とホテルと安くするためにかなり調べました。

中国(丹東)への一番安い航空券を調べつくした際の比較はコチラ

トランジットの宿はコチラ

私は海外旅行が好きで、これまでも様々な国へ海外旅行に行きましたが、どの国に行く時も一番安い航空券は念入りに調べます。

そして、どの国に行く時も、どの時期に行く時も、DeNAトラベルが最も安いのです。

帰国後に、時期によって「どのWEBサイトから取るのがやすいか」が変わるかと思い、帰国後にも色々調べてみましたが、どの時期だろうと、

・日本発着の航空券を単体で取るならDeNAトラベルが最安値
・ホテルを単体で取るならエクスペディアが最安値
・航空券とホテルをセットで取るならがDeNAトラベル最安値

と判断してよいと思います。




あとは、心配する家族や友人への説明や連絡をします。
だいたいの家族や友人は心配しますので、説明を考えておいた方が楽です。

よく受ける質問の1位は、「北朝鮮って、行けるの?」で、2位は「大丈夫なの?(拉致されないの?治安とか大丈夫?)」あたりかと思います。

また、「費用はいくらくらいかかるの?」「見どころとか観光スポットとかあるの?」「食べ物おいしいの?」などもよく聞かれる内容です。

「北朝鮮に行く」と話した際によく受ける質問はコチラ




旅行代理店に振り込むお金、中国への航空券とホテル代以外にかかるお金の準備ですが、北朝鮮国内でかかる費用のほとんどはツアー料金に含まれているので、北朝鮮に入ってしまうと、そんなに支出はありません。

タバコを吸う人は現地でのタバコ代、お酒を飲む人はレストランでの食事代(ツアー代に込み)にオプションで足すビール代、あとは日本へのお土産代、金日成・金正日の銅像に添える献花代、オプションツアーを申し込んだ場合、その参加料などです。

北朝鮮旅行でかかる費用・総額と内訳のまとめはコチラ





4.いよいよ出発、まずは北朝鮮の入国口の街まで移動する。

私たちは中国・青島でトランジットし、中国側の北朝鮮との国境沿いにある丹東(Dangdon)から電車経由で北朝鮮の街への入国を選びました。

日本出国から北朝鮮への入口の街までのレポートはコチラ

丹東は朝鮮民族が多い街ですので、丹東の北朝鮮レストランや、朝鮮戦争に関する見所などへ行って観光を楽しみました。

丹東の北朝鮮レストラン


朝鮮戦争には、北朝鮮の他に中国軍とソ連軍が参戦したことが既に明らかにされていますが、ソ連軍はこっそり参加したくらいで、北朝鮮側はほとんど北朝鮮軍と中国軍の混成部隊です。

この朝鮮戦争の際に、中国軍が北朝鮮に入った橋であり、米軍に空爆されて今は半分しか残っていない「鴨緑江断橋」という橋が丹東にあり、これが観光スポットになっています。


ちなみに丹東には日本人はほとんどいません。

関空では「丹東に行くのですか?珍しいですね。」と言われました。


5.ようやく、中国を出発。

丹東から北朝鮮に行く電車は1日1本、朝10:00に丹東駅を出発します。

丹東を出発する日の朝8:30に、朝鮮国際旅行社の中国支社のスタッフの方と丹東駅で待ち合わせします。

僕らのところに来たのは英語は話せるけど日本語は話せない中国人の女性で、この女性から北朝鮮入国ビザ、電車の切符を受け取り、電車の乗り方の説明を受けて電車に乗ります。

丹東出発の流れと入国審査の内容のレポートはコチラ

ここでちょっと驚くのは、電車に乗る際に、丹東の駅の出国ゲートで一度パスポートを預けなければなりません。

少し、不安になります。

しかしこのパスポートは出国審査が終わって、ホームに出たら、ホームで返してもらえます。


6.ついに、北朝鮮入国。

電車が、中国と北朝鮮の国境である鴨緑江に掛かる橋を渡り終えると、すぐに北朝鮮側の最初の駅である、新義州(しんぎしゅう)という駅に到着します。

ここで念入りに検問されます。
軍人が車両に乗って来て、一人ひとり検問をするのですが、全乗客の検問を終えるのに2時間くらいかかります。

検問の内容は、まず持ち物です。

荷物を一つひとつ取り出し、

軍人:(指差しで)これは何だ?
私:「Wear!Wear!」

軍人:(指差しで)本当か?
私:「Yes!Yes!」

軍人:(指差しで)これは何だ?
私:「Medicine!Medicine!」

軍人:(指差しで)本当か?
私:「Yes!Yes!」

のように、一つ一つ荷物を確認されます。

特に念入りなのが、まず、上述のようにスマホの中に入っている写真です。

私に尋問してくる軍人とは別の軍人が、スマホの中を念入りに探して、NG写真がないかを確認します。

もし、NG写真があった場合は、無断で消されます。

私は出国時に自宅の契約書の写真が「怪しい」と思われたようで削除されていました。
(ただし、ゴミ箱の中から発見されましたので復帰させることができました。)

また、上述のように書籍も念入りに確認されます。

私は何冊か紙の書籍を持ち込んだのですが、更に別の、おそらく日本語が読める軍人のところにまわされ、念入りに内容を確認されます。

私は「本当に没収されるのか?」を試したかったので、何冊か持ち込んでみました。

そして、実際に没収されました。

試しに北朝鮮のことを書いた本を持ち込んでみた結果はコチラ

ちなみにkindleは一切見られませんでした。

他の人も見られなかったのかどうかはわかりませんが、怪しいけど持ち込みたい本はkindleに落として持ち込むのがよいかもしれません。


また、スマホやカメラにGPS機能がついていないかを念入りに何度も聞かれます。

GPSがついているカメラは持ち込めないと言われていたので、こちらもGPSはついていないと念入りに訴える必要があります。

自分の取り調べが終わると、あとはゆっくりできます。

これが終わると、電車は平壌に向けて再出発します。
平壌到着は7時間後です。地方の農民の農作業を眺めながら、寝台列車でゆっくりしました。

北朝鮮の農村、田植えは手作業


特急電車から見る風景の楽しみ方はコチラ



7.まずは、平壌市内観光へ。




平壌駅に着くとまずはガイドさんと合流し、ホテルへ移動します。
平壌駅でガイドさんと合流する流れはコチラ


朝鮮国際旅行社のガイドさんは日本語完璧です。

今回の旅行に帯同した2人のガイドはコチラ

ガイドさんに聞いた話だと、平壌の外国語大学で日本語のコースがあり、ここでしっかり日本語を勉強するので、大学時代にかなりしゃべれるようになるそうです。

大学では日本の小説を読んだり、映画を見たり、アニメを見たりして日本語を勉強するそうです。

かつては日本から北朝鮮への旅行者数は今より多かったそうなのですが、拉致問題をはじめとする外交問題の浮上以来、旅行者数は激減し、今は日本語ガイドはたくさんいるのに日本人のアテンドの仕事がほとんどなくなっているとのことでした。


私たちが北朝鮮で泊まったホテルはほとんどは平壌高麗ホテルというホテルです。

外国から北朝鮮に旅行に来ると、泊まるホテルは平壌高麗ホテルか羊角島ホテルしかないそうです。

平壌高麗ホテルと羊角島ホテルは、はっきり言って、いずれも高級ホテルと言って問題ないと思います。


私たちが泊まった平壌高麗ホテルはホテル内に複数のバー、複数のレストラン、スーパー、土産物店、ゲームセンター、大浴場、ゴルフ用品店までありホテル内はあまり不自由することもありません。

施設は広くて綺麗で、アメニティもほぼパーフェクトです。


ただし、北朝鮮は数年前まで深刻な電力不足で、その頃からの名残でホテルは人がいない場所は照明は消されています。

最上階には北朝鮮の夜景が見渡せる回転ラウンジがあり、ラウンジ自体が回転して平壌の全体像を見ながら飲めるのですが、私たちが行くまでは回転は止まっていて、私たちが席についたら思い出したように回転し始めていました。

そして、平壌の夜景も、途上国とはいえ一国の首都である200万人都市とは思えないほどの灯りの少なさでした。

また、土産物店とゴルフ用品点は私が見に行った際は閉店しているようでした。

「北朝鮮では最高の高級ホテル」と言われる平壌高麗ホテルの紹介はコチラ

また、羊角島ホテルも見に行かせてもらったのですが、こちらは最上階の回転ラウンジやバー、レストランはもちろん、書店やカジノまで揃っていました。

ガイドの説明では、羊角島ホテルでは中国人や欧米人が多くうるさいため、日本人には平壌高麗ホテルの方が人気とのことでした。


北朝鮮では、ホテルの中は自由行動ですが、ホテルを一歩でも出る場合、すべての行程はガイド同行です。

バレなければよいのでは?と思う人もいるかもしれませんが、確かに北朝鮮人と日本人は顔は似ているのですが、日本人が来ている服装は明らかに日本人らしい服装で浮きますから、すぐバレそうです。

特に茶髪の男性というのは北朝鮮には存在しないので、茶髪の男性は間違いなくバレるので、おとなしくガイド同行で外出するのがよいと言えます。

ガイドは旅行者の滞在中は旅行者と同じホテルに泊まっていて、部屋番号も教えてもらえるので何かあったら夜でもガイドに連絡できます。

行動・撮影・通貨・・・市内観光に出る際に知らないとまずい、注意点はコチラ


平壌に着いた日はゆっくりして、翌日から観光スタートです。

平壌の観光スポットのまとめはコチラ

「北朝鮮らしい観光地」という意味では、偉大な指導者金日成主席や同金正日総書記を讃えるスポット、朝鮮労働党を讃えるスポットは外せないと思います。

ほとんど必ず訪問するのは

・金日成・金正日の巨大な銅像がある万寿台(マンスデ)大記念碑


→北朝鮮では結婚したカップルは必ずここへ報告とお礼(偉大なる金日成主席、金正日総書記のおかげで結婚できました・・・)へ来るので、いかに崇拝されているかが見れます。

北朝鮮にはここの他にも、国中、平壌市内中に金日成・金正日の銅像が建っています。

平壌以外の街に行く際は、その街の金日成・金正日の銅像がほとんど必ず行程に組み込まれていて、そこで帽子を取り、頭を下げ、献花をします。

この献花を嫌がる観光客もいるようで、銅像がある公園などの駐車場に入るあたりでガイドが必ず「日本には郷に入りては、郷に従えという諺があります。朝鮮では皆、献花をしてもらっていますので、朝鮮に来たら一緒に献花してもらいたいと思います。」と毎回同じ説明で念押しします。


なお、これは独裁国家あるあるですが、かなりの独裁国家でも現職の政治トップを銅像などを建てて崇拝することはほとんどありません。

北朝鮮も、中国も、ロシアも、キューバも、現職の独裁者の銅像は建てられていません。

例外はトルクメニスタンという独裁国家で、ここの銅像は現職の独裁者、しかも金色で、朝から夕方にかけて太陽の方を向かって回る仕様になっているとのことですので、過去の独裁者が、銅色で、回らない銅像しかない北朝鮮は独裁国家の中ではまだマイルドな方だと言えそうです。


・高さ70メートル、平壌市内が一望できる主体(チュチェ)思想塔


→世界一高い石塔で、なかなかの景色なのと、塔の入口に(今ほど北朝鮮の評判がヤバくなかった時代に)世界各国から贈られたプレートがおもしろいです。

「主体思想」とは北朝鮮独自の社会主義思想のことです。

1970年代くらいのものが多いですが、世界中に「金日成主義研究会」とか「主体思想研究会」という、(おそらく)共産主義の団体があり、それらの団体から、主体思想のシンボルである主体思想塔が完成した記念に贈られたプレートが飾られています。

日本の団体からの記念プレートもありました。

この塔自体は、晴れていれば平壌市内を一望できるそうで、かなり楽しみにしていたのですが、あいにく私たちが行った日は雨と強い風でしたので、私たちはさっと見てすぐに返ってしまいました。


・金日成の生家や金日成の生涯を紹介する博物館がある万景台(マンギョンデ)


→北朝鮮で語り継がれる、数々の金日成伝説が、完全バージョンで聞けます。

金日成伝説は金日成のひいおじいちゃんの伝説あたりから始まっていて、日本で言う江戸時代に金日成の曾祖父がアメリカ人を侵略から追い払ったとか、そんな伝説が紹介されています。


金日成の人生が詳しく紹介されているのですが、中でもポイントは北朝鮮の建国神話につながる第二次大戦中の金日成の生き方です。

金日成は、第二次世界大戦中は日本の領土だった現在の北朝鮮国内で反日抗争を行っており、偉大なる金日成主席をはじめとした抗日パルチザン抗争メンバーの努力により、日本を追い出し、朝鮮民主主義人民共和国を建国した、と北朝鮮では教えられています。

主な抗争の拠点は北朝鮮の霊峰(日本で言う富士山のような位置づけの山)である白頭山(ペクトゥサン)であり、ここで息子の金正日が生まれた、とも教えられています。

ところが、ソ連崩壊時に出て来た旧ソ連の秘密文書が公開された際に、金日成は第二次世界大戦中に北朝鮮でほとんど活躍することができず、命からがらソ連に亡命したことが文書で明らかになっています。

ソ連では金日成はソ連人としてソ連軍に入っていて、しかもほとんど戦場には赴かないまま、内勤として終戦を迎えていたことも明らかになっています。

結局、終戦後はソ連がソ連の言うことを聞く政府を朝鮮半島の北側に作りたかったために、何人かの北朝鮮トップ候補者と面接したところ、一番スターリンの言うことを聞きそうだった金日成がスターリンに選ばれて北朝鮮に送り込まれています。

おまけに、そのソ連にいた間に息子の金正日が生まれていて、ユーリというソ連名までつけられていたことすら明らかになっています。

つまり、この「第二次世界大戦中の金日成の行き方」については完全なウソが教えられているのです。

北朝鮮の歴史教育は「ウソとは言えないが、かなりニュアンスが盛られている」というくらいのギリギリのところをついて教えられているのですが、ここの部分は完全なウソです。

その当たりを探して見つける楽しみがあるのがこの万景台であると言えます。


平壌市内の歴史博物館系の建物はいずれも、

「いかにアメリカがひどいことをしてきたか。」
「そのような過酷な状況の中で、偉大なる金日成主席は、いかに頼もしく人民を指導したか。」
「それに人民は応え、いかに飛躍的に国が成長したか。」

を強調した説明を受けますので、それを楽しみます。



この他に、金正恩の肝いりで作られた科学技術殿堂、世界で一番大きい凱旋門で知られる凱旋門などにも訪問します。




また、祖国解放戦争勝利記念館のある公園では、歴史を学ぶスポットにも訪問できます。

・朝鮮戦争の歴史を(かなり偏った歴史認識で学べる)祖国解放戦争勝利記念館
・アメリカの船を北朝鮮軍が拿捕した歴史的な事件、プエブロ号事件を学べるプエブロ号

なども訪問できます。




博物館、資料館系で私が一番面白かったと思ったのは、祖国解放戦争勝利記念館です。

重ね重ねになりますが、かなり偏った歴史認識で朝鮮戦争を紹介しています。

まず、博物館の名称が「戦争勝利」になってしまっています。(朝鮮戦争は「停戦」中です。)

例えば、冒頭では「誰が朝鮮戦争を仕掛けたのか?」というビデオを見せられ、答えは「アメリカ」というビデオですが、事前に勉強していなければ「あれ?そうだったか。」と思ってしまうかもしれません。
(実際は金日成が仕掛けたことが文献などから明らかになっています。)

ぼーっと話を聞いていると洗脳させられそうになりますが、日本に帰ってから、どこがねつ造だったのか、どこが「一理ある」ところなのか、検証する楽しみがありました。

また、説明や表現が怪しい(洗脳されているのでは?と思ってしまう)点は、ガイドに質問すると、きっちり答えてくれます。

例えば、「『停戦になった。』と博物館では説明されていたのに、なぜ建物の名前は『戦争勝利記念館』なんですか?」とガイドにストレートに聞くと、「それまで負けたことのなかった、しかも世界中で威張っていたアメリカを追い出したという意味で、戦勝と言ってもいいでしょう、という意味です。」と説明してくれました。



また、平壌雑技(サーカス)などのショーも見れます。

普通のサーカスも見れますが、北朝鮮の音楽やダンスに秀でた優秀な小学生を紹介するスポットである学生少年宮はなかなか見どころです。

私たちはサーカスと学生少年宮の両方に行ったのですが、はっきり言って、サーカスはかなりしょぼいといわざるをえません。

いっぽう、学生少年宮は、かなり意外なことに「え!?これが小学生なの!?」と驚かされるくらいのレベルの高さはあります。

なので、もしサーカスか学生少年宮かどちらか一方に行くのであれば、学生少年宮はオススメです。




あとは、書店、スーパーに寄ったり、地下鉄に乗ってみたりという体験もさせてくれました。


北朝鮮の書店では、日本語の本も売られています。

ただし、日本語版が出ている本の内容は、北朝鮮の歴史、金日成の行き方と政治的偉業、金日成語録、金正日の行き方と政治的偉業、金正日語録、金正恩の行き方と政治的偉業、金正恩の行き方と政治的偉業の7種類しかありません。

海外や日本の雑誌はもちろんなく、全て北朝鮮政府発行の雑誌です。


一方、北朝鮮のスーパーではかなりたくさんの海外製の製品が売られています。

日本のものは調味料が多く、醤油、酢、みりんなどは日本のものが多く売られています。

また、日本のお茶やカップラーメンも日本のパッケージそのままで売られています。

また、お菓子などはヨーロッパのものなどがそのまま売られています。

ここだけは他の海外の国と同様、どんな国のどんな物が売られているのかを楽しむという楽しみがあります。

ちなみに書店もスーパーも、外国人が使える通貨は中国人民元とユーロのみです。



また、北朝鮮の地下鉄は、駅や電車のいたるところで金日成・金正日がまつられている(しかも、かなり派手に)という点で、見どころあります。



あと、明らかに北朝鮮人ではないとわかる見た目の人が電車に乗ると、乗客が露骨に不審そうな目でこちらを見て来ます。

ガイドいわく、外国人はかなり珍しいからだそうですが、市民のそんな反応も楽しめます。


その他の平壌の観光スポットのまとめはコチラ






気になる食事ですが、ガイドさん同伴で北朝鮮レストランを中心にとります。

定番のチヂミビビンバキムチ、サムゲタンや、海外からの評価も高い平壌冷麺、焼き肉、高麗時代の宮廷料理などの他に、朝鮮半島名物・犬汁などかなり変わった料理も楽しめます。


北朝鮮のレストランで出る料理は韓国料理と同じですが、味付けはどれも韓国で食べる物より少しあっさりめの、出汁の旨味重視の薄味です。

韓国料理と違い、辛さも控えめで、辛いのが苦手な人でも大丈夫な物が多いです。


韓国ではあまりない、北朝鮮の名物料理と言えば平壌冷麺です。

日本の焼き肉屋さんや冷麺専門店で出る冷麺は平壌冷麺であることが多く、あっさりした出汁と酢で味付けした食べやすい平壌冷麺はかなり高得点です。

(貧しい農村部の人は知りませんが)平壌市民は平壌冷麺が大好きだそうです。

現地のガイドも平壌冷麺が大好きだそうで、「1日に1食は必ず食べる。」と言っていました。


また、私が気に入ったのは参鶏湯です。

これは韓国のものに劣らない品質だと言えます。


また、気持ち悪がって食べない観光客も多いそうなのですが、私のお気に入りの一つが犬汁です。

日本では江戸時代の将軍綱吉の時に生類憐れみの令が出たのをきっかけに犬食文化は廃れましたが、中国東部や朝鮮半島ではいまだに犬食文化があります。

韓国ではソウル五輪と日韓ワールドカップの際に、海外からの目を気にして政府が犬食文化を禁止するように働きかけたりしましたが、北朝鮮ではいまだにメジャーです。

味もあっさりしていて、食べやすく、私はまた食べたいと思ったくらいです。





観光客が行くコースに入っている北朝鮮レストランは、かなり清潔で、リラックスして料理を楽しめます。
(焼き肉やの空調が少し弱いなど、一部例外はありますが。)



ビール、マッコリ、焼酎などのも一緒に頼めますので、食事はかなり楽しめると思います。

なかでも、大同江(テドンガン)ビールというビールは金正日の指示で10年ほど前に製造が開始された北朝鮮のビールで、海外のビール愛好家が「韓国のビールより、大同江ビールの方がずっとうまい!」と評価をしたことで有名になっています。

この大同江ビールはレストランや、屋上の回転ラウンジで飲めます。

私たちも堪能しました。

北朝鮮のビールのよいところは、なんと言ってもキンキンに冷えていることです。

ヨーロッパや東南アジアなどではビールが常温なのが当たり前の国もありますが、北朝鮮のレストランではどこもキンキンにビールを冷やしていますので、かなり美味しく飲めました。

北朝鮮レストランと北朝鮮の食事のまとめはコチラ




街は極めて清潔で、うるさくもないので快適です。


町中に溢れる、金日成・金正日肖像画


また、平壌の街はかなり独特の様相を呈していますので、歩いて街を眺めているだけでもかなり楽しめます。

例えば、平壌の街を歩いている人はほぼ全員胸に金日成バッジをつけています。

金日成バッジは、よくみると金日成一人の絵がかかれたバッジの人と、金日成と金正日のコンビのバッジの人がいます。

これは朝鮮労働党の中でのランクを示しているという噂もあるのですが、現地のガイドいわく「そのような噂がありますがそれはデマです。バッジをもらった年によってデザインが異なるだけ。」とのことでした。


また、北朝鮮は今は空前のバレーボールブームだそうです。

したがって、あちこちでバレーボールをしているのですが、すごいのはほとんどの公園でバレーボールをしていることです。

バレーボールをしていない公園がほとんどありません。

「スポーツ通り」というスポーツ施設が集約されている通りにはサッカーグランドもあるのですが、野球をしている人も、フットサルをしている人も1人もいません。

バレーボールを国策で強化したいのか、新聞や雑誌の種類が少ないのでどこかがたまたまバレーボールのことを書いただけで国民的ブームになってしまうのか、それとも1つのスポーツだけをさせて1つのスポーツ施設だけを増やした方が効率的だからなのか、などと想像する楽しみがあります。

ブームと言えば、魚が釣れる川では釣りに没頭する人が川を埋めています。

ガイドに聞いてみると「北朝鮮の定年後の趣味・第1位」は釣りだそうです。

しかも実は北朝鮮も国民が高齢化していて、それにより定年退職して釣りを楽しむ人が多いそうです。

かなり変わった風景が山盛りなので、街を眺めていてもけっこう楽しめると思います。



8.ついでに、郊外へも繰り出してみる。

2日目以降は、郊外へ繰り出します。

ラドン温泉のある南浦(なんぽ)
・韓国との軍事境界線がある板門店(はんもんてん)
・世界遺産「開城の歴史的建造群と遺跡群」がある開城(けそん)
・金日成のファインプレーである西海(そへ)ダム
・北朝鮮の農業の歴史と現状がかなりわかる青山里(チョンサンリ)共同農場

などを巡りました。

北側から見る板門店・軍事境界線


板門店、青山里共同農場、西海ダムには、専門のガイドがいて解説してくれます。

この解説は朝鮮語(韓国語)なのですが、我々にずっと同行している日本語のガイドが同時通訳してくれるので安心です。


なかでも専門ガイドの解説がおもしろいのは板門店と青山里共同農場です。

板門店は韓国側からも入ることができますが、北朝鮮側から入るのはかなり希少な経験だといえると思います。

この板門店では軍人が解説をしてくれるのですが、しょっちゅう「あの強盗のごときアメリカ野郎が取った行動は・・・」とか、「このときの傲慢無礼なアメリカ帝国主義の要求は・・・」とか、アメリカ叩きの枕詞をつけて来るのはみどころです。

板門店の解説はコチラに詳しくまとめています


また、北朝鮮の農業といえば、1990年代に記録的な数の餓死者を出したほどのひどいもので有名です。

元々はソ連でスターリンとフルシチョフが国中の林を全て切り開いて、トウモロコシ畑にするよう指導したのが遠因です。

これにより、ソ連の山はハゲ山だらけになり、山は保水能力を失って洪水が増え、結局田んぼも畑も壊滅状態になり、ソ連の農業は大失敗しました。

ところが、このやり方は「大成功した」とソ連が世界中に宣伝したため、中国、北朝鮮、カンボジアなどが同じやり方を真似し、同じように大量の餓死者を出しました。

このハゲ山政策の洪水により、北朝鮮の農村で大量の餓死者が出た様子は上述の脱北者・パクヨンミ氏の著書「生きるための選択」にも書かれています。


ところが、北朝鮮の農業は、実は2000年代に入ってから世界でも類を見ないほどの急激な農業生産高の成長を実現しています。
(これ、かなり調べましたが、特にこの5年ほどは本当に素晴らしく成長しています。)

青山里共同農場では、共同農場の副代表の方から、(世界最悪レベルというどん底から)どのように北朝鮮の農業を飛躍させたのかを解説してくれます。

話の内容も、後で日本に帰ってから調べたのですが、最新の農業理論に沿っていて、かなり的を得た農業政策でした。

金正恩の政策の中で数少ない大成功例ですが、これも日本ではほとんど報道されていません。

北朝鮮の本気を見た気がします。

北朝鮮の農業の実態と青山里共同農場の解説はコチラに詳しくまとめています




また、南浦市のハマグリのガソリン焼き、開城の宮廷料理など、各地方の名物料理も食べられます。





北朝鮮の、平壌以外の観光スポットのまとめはコチラ




9.最終日、パスポートと帰りの電車の切符を受け取って、帰国。

平壌で現地のガイドさんと最初に会った瞬間にパスポートをガイドさんに渡します。
そのパスポートは帰りに平壌駅を出る際に、返してくれます。


同時に切符を受け取って、平壌駅を出発、出国します。
僕たちは帰りも平壌・丹東間を走る電車を選びました。


丹東に入る前に、新義州で再度、検問です。
入国ほど厳しくはありませんが、全員合わせて1.5時間くらいはかかります。

検問を終えると、すぐ丹東です。
私たちは帰りも青島経由で帰国しました。


日本人の北朝鮮旅行を唯一取り扱っている朝鮮国際旅行社によると、北朝鮮に訪れる日本人観光客は年間で150人しかいないそうです。

なので、ネットで探しても北朝鮮旅行の手順などについては古い情報しかなかったりしますので、ちゃんと問い合わせて確認してから行く必要があります。



しかし、年間で150人って・・・。
南朝鮮(韓国)への日本人観光客はピークである2012年で年間3519万人いるので、その約20万分の1ということになります。

まさに秘境ですね。

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北朝鮮の観光スポットの口コミはトリップアドバイザーでも調べられます。
世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」で北朝鮮観光地の口コミを見る


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