忍者ブログ

よくわかる北朝鮮旅行2016年5月 by 神谷奏六

Home > ブログ > > [PR] Home > ブログ > 北朝鮮旅行で見た北朝鮮の歴史・歴史認識 > 北朝鮮が朝鮮戦争を「勝利」と言うのはねつ造か?洗脳か?いや、一理あるのか?を検証してみる

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

北朝鮮が朝鮮戦争を「勝利」と言うのはねつ造か?洗脳か?いや、一理あるのか?を検証してみる

世界では当然常識であり、北朝鮮でも平壌市内の歴史の博物館や板門店で解説されているように、朝鮮戦争は(終戦ではなく)「停戦中」です。


しかし、北朝鮮旅行に行くと、しょっちゅう朝鮮戦争に関して「勝利」という表現を目にします。

朝鮮戦争を解説する北朝鮮国内で最も大きな博物館である「祖国解放戦争勝利記念館」なんて、「勝利」と博物館のタイトルからうたっています。


「出たー!ねつ造!洗脳!」

と笑って済ませるのは簡単です。



しかし、北朝鮮のプロパガンダの徹底度は、すごいです。

そして実際、プロパガンダは、に関しては、諸外国と比べても、驚くべきレベルの高さで成功しています。(北朝鮮が他の政策で色々失敗しすぎているので目立ちませんが。)


情報統制しているとはいえ・・・この高度情報化社会に、なぜここまで成功しているのか。


北朝鮮旅行に行って、歴史上の資料をよくみたり、あるいは現地の様々なガイドに深くツッコミ質問を入れて反応をよく見てみたりすると、あながち「ただのねつ造」とも言えない、というものがあります。

北朝鮮では、だいたいは、なんらかのそれなりに国民が納得しそうな理論を組み立て、それを学校などで教育することで洗脳している場合が多いのです。

ただ勝った勝ったとわめいているだけでなく、理論がある。
だから、その考え方で国民の思考を統一することに大きく成功している。

では、この「朝鮮戦争で勝利」のプロパガンダ、どういう論理で「戦勝した」と伝えているのか、これを検証します。



まず、「戦勝」の定義です。

学者などの間では、歴史観において「戦争の目的を達成したら『戦勝』」としている有力説があります。

ただ、これだと、戦勝国ばっかりになったり、敗戦国しかいない戦争がいっぱい出て来たりで、話が進みません。
今回の趣旨とも違います。

そこで、このブログでは当面、「国どうしの戦いに勝った」と判断できる結果があればこれは『戦争に勝利』とします。

そして、開戦当初の目的を達成したら『戦争に成功』とします。

「(1)『戦勝』の定義を確認する」はコチラ


ではこの意味で、北朝鮮は勝利しているのでしょうか。


北朝鮮は相手国を滅亡させたり、賠償金を取ったりはしていません。

その点では、「国どうしの戦いに勝った」とは言えません。


ただし、「相手の領土を占領したか?」で言うと、北朝鮮で売られている地図などを見てみると、朝鮮民主主義人民共和国の領土は、朝鮮半島全体を示してます。

つまり、領土を奪ったことになっているのです。

これは韓国も北朝鮮政府を認めておらず、韓国には韓国の領土を朝鮮半島全体とする地図もあることからお互いさまです。

なので、(かなり苦しいですが)相手の領土を占領したという意味で、戦いに勝ったという認識はいちおう筋が通ることになります。


また、「降伏させたか?」で言うと、朝鮮戦争の停戦協定の中に「敵対行為の禁止」というのがありますので、「韓国(とアメリカ)による敵対行為を止めさせることを納得させた」という意味では、まあ(これもかなり苦しいですが)降伏っぽいと言えなくもないということになります。

つまり、領土を占領した(と主張し続けている)、さらに降伏させた(っぽい状態だと主張し続けている)という点においては、戦勝っぽく見えなくもないが、一般常識で考えると、その「戦勝」は強引すぎるだろう、という状況と言えるのではないでしょうか。

「(2)国どうしの戦いに勝ったのか?を検証する」はコチラ


それでは「戦争当初の目標を達成したのか?」言い換えると、「戦争に成功」したのか?(学者などの間である有力説「目的達成したら戦勝」では「戦勝したのか?」)についてはどうか。

北朝鮮政府が国内向けに発行している歴史書「朝鮮通史<下>」では、朝鮮戦争の目的について、

一.(帝国主義の侵略から)祖国の自由と独立、民族の自由、栄誉、民族の自主権を守るため

二.南朝鮮でアメリカ帝国主義とかいらい一味(李承晩とそのとりまき)の反動体制を一掃することで、人民に人間らしい生活をもたらす

三.帝国主義連合勢力と対抗し、アジアと世界の平和と安全を守る

の3点だという歴史認識で説明しています。


朝鮮戦争は二.と三.について完全に失敗、むしろ逆効果でしたが、一.については、目的を達成しているのです。

なので、戦争に成功したのかと言われれば、「(帝国主義の侵略から)祖国の自由と独立、民族の自由、栄誉、民族の自主権を守る」という目的を達成したという意味では、戦争に成功。

「開戦当初の目的を達成した国は戦勝」という説を取れば、なんと戦勝と言えるということになります。

つまり、この歴史認識によると、「戦勝」という考え方は正しいということになるのです。

北朝鮮の現地ガイドもこの歴史認識を採用しているので、北朝鮮の現地ガイドが言う「戦勝」は嘘ではないのです。

「(3)『今の北朝鮮国民が考える開戦当初の目的』を達成したのか?を検証する」はコチラ


では、このような(かなり偏った)歴史認識ではなく、今の一般的な歴史認識にのっとって、朝鮮戦争に勝ったのか?を見た場合、どうか?


様々な文献から北朝鮮、韓国以外の国の「朝鮮戦争の目的」というものが明らかになって来ています。

北朝鮮は「武力統一」が戦争目的ですから、「戦争は失敗」、「開戦当初の目的を達成した国は戦勝」という説を取れば「敗戦」です。

もちろん韓国も目的不達成ですが、アメリカ、ソ連、中国は目的を達成しています。

自分たちで仕掛けておいて、北朝鮮と韓国は失敗、他国の領土で戦争しておいて、アメリカ、ソ連、中国が成功した戦争だと言えるのです。

北朝鮮以外の国は、朝鮮戦争のそれぞれの当初の目的を達成したのか?の検証はコチラ

北朝鮮の旅行ガイドに聞いた「なんで停戦中なのに『戦勝』なんですか?」に対する返しと、その検証はコチラ
PR

Comment0 Comment

Comment Form

  • お名前name
  • タイトルtitle
  • メールアドレスmail address
  • URLurl
  • コメントcomment
  • パスワードpassword

PAGE TOP