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よくわかる北朝鮮旅行2016年5月 by 神谷奏六

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平壌観光地レポート 〜万寿台大記念碑へ行く〜

北朝鮮旅行に行くと、多くの場合、全ての観光の行程の中で最初に行くのが万寿台(マンスデ)大記念碑です。


北朝鮮には最も大きい大同江(テドンガン・日本語読みは「だいどうこう」)と、少し小さい普通江(ポトンガン・日本語読みは現地ガイドいわくなぜか「ふつうがわ」)の二つが流れています。

この二つが接近する岬のようになったところの高台が万寿台という地域です。


この万寿台というエリアには国会議事堂(のようなもの)、オペラなどを上映する芸術劇場などが集まっているデートスポットになっています。

そのなかでも、このエリアの一番の名所が、金日成と金正日の高さ10メートルの銅像がドーンと建つ、万寿台大記念碑です。


見どころを少し解説します。




楽しみ方1.北朝鮮人が偉大な指導者と、その銅像をどれだけ崇拝しているかを感じる

ネット上で北朝鮮旅行に行った人の旅行記を見ると、ほとんどの北朝鮮旅行の行程ではここに最初に行くようです。

私たちもまず万寿台に最初に行きました。

デートスポットの噴水とか、芸術劇場とか、国会議事堂(のようなもので、正しくは万寿台議事堂)とかのあたりを散歩してこの銅像に向かいます。


芸術劇場で開催されているオペラは、抗日パルチザン闘争のオペラのみだそうです。
(北朝鮮の現地ガイドはシェイクスピアを知りませんでした。)


また、ガイド(32歳・女性)曰く、「ここでデートする北朝鮮のカップルも、デートでこの辺に来る際は、デートプランの中で必ず万寿台大記念碑(銅像のことです)を入れる、ただし若い人はわからない。」と言っていました。

デートで必ず、しかもわざわざ行くところが「銅像」・・・。
銅像って、日本ならせいぜい渋谷ハチ公前が待ち合わせに数分使われるくらいなのに。。



万寿台の駐車場に着くと、車にチマチョゴリを来た女性が近づいてきて、花束を売りつけてきます。

ここに訪問する前日(つまり平壌に着いた日)に私たちはガイドから「日本には郷に入りては郷に従えということわざがあります。北朝鮮では金日成主席・金正日総書記の銅像に花を添えます。北朝鮮に来たからには、外国人の方にも花を添えてもらっていますので、お願いします。」と念押しされています。

なので、この人たちから300円で花を買い(ちなみに造花でした)、銅像まで持って行きます。



平日なのであまり人は多くありませんでしたが、現地ガイドいわく曜日によってはチマチョゴリを着た結婚したての夫婦で溢れるそうです。

北朝鮮では、婚約するとこの銅像に報告とお礼に行きます。

「偉大な指導者の金日成主席、金正日総書記のおかげで、結婚できました・・・。」と。

・・・。

結婚式の日にまた行く人も多いそうです。


銅像から10メートルくらい離れたところで我々2人とガイド2人の合計4人で横一列になり、銅像にお礼。

そこから花を持って銅像の足元に行き、花を添えたら、現地ガイドに「写真を撮りましょう。」と促されます。

ガイドに写真を撮ってもらう際に、銅像の前に建って銅像と同じ方向を向くと、平壌の街が一望できます。

「町中の市民を指導していただいている。」というようなニュアンスなのだそうです。


自分たちで写真を撮ってもよいのですが、もちろん、「銅像が見切れないようにキレイに撮ってください。」とガイドから念押しされます。

銅像の背後に描かれているのは、金日成が抗日パルチザン闘争を成功させた(と北朝鮮国内では教えられているだけで本当は無関係な)場所であり、その最中に金正日が生まれた(と北朝鮮国内では教えられているだけで本当はソ連生まれですが)場所である、革命の聖地・白頭山(ペクトゥサン・日本語読みは「はくとうさん」)が描かれていますので、これと一緒に写ります。


この白頭山の絵が描かれている建物は革命記念博物館だそうです。
が、私たちが行った日は、現地ガイドいわく「現在リニューアル中」とのことで入れませんでした。


こんな感じで、北朝鮮市民がこの二人をいかに崇拝しているか、を旅行のしょっぱなから感じます。
(ただし現地ガイドの話を総合すると、若い人はどれだけ崇拝しているのかは知らない、とのことですが。)




楽しみ方2.2体の銅像の満面の笑みから何かを感じる

ここにはもともと1972年に金日成の銅像が一つ、ドーンと建てられました。
(つまり、生前に建てられたということです。これは社会主義国の中でもなかなかレアです。普通の社会主義国は、さすがに遠慮して死後に建てます。)


ネットなどで情報を探していると、「その後、金正日の死去を受けて2012年に横に金正日の銅像がもう1個追加された。」という情報もありますが、実は少し違います。

現地のガイドの説明によると、2012年に金正日の銅像を建てる際に、一度古い金日成の銅像を撤去し、新たに2つの銅像を建てたようです。


古い金日成の銅像は、ムスっと怒ったような顔をしていますが、今の金日成銅像は横の金正日銅像と一緒に満面の笑みです。

グーグル画像検索で出てくる画像
下の方まで行くと怒った金日成銅像が出てきます。

ジャーナリスト・池上彰氏の著書「そうだったのか!現代史〈パート2〉 (集英社文庫)」には金日成の独裁政治がいかに影響が大きかったかの解説と合わせて、万寿台の古い金日成の像が紹介されています。




北朝鮮の現地ガイドの話を聞いていると、金日成や金正日について「救ってくれる」存在という言葉をよく使います。

金日成は日本の支配から救ってくれる、アメリカの攻撃から救ってくれる、革命成就までの苦しみから救ってくれる、産業の荒廃から救ってくれる・・・。

金正日は貧困から救ってくれる、南朝鮮(韓国です)の横暴な外交から救ってくれる・・・。

最初に金日成の銅像が建てられた当時は、まだ冷戦中で、アメリカに勝つ戦う人、2012年にもなると生活苦から救ってくれる人、みたいな感じで、「次は笑顔の感じにしよう」となったのかもしれません。


北朝鮮では、今は国中の銅像や肖像画はほとんど笑顔です。


金日成が亡くなったとき私は12歳だったのであまり覚えていませんが、金正日はニュースでよく見ていました。

私がニュースで見た金正日は、だいたい怒っていました。

なので、(金日成はともかく)金正日のこの笑顔は、違和感があるような、「今日は怒ってなくてよかった」みたいな、なんか気持ち悪いような、うっかりいいひと感を感じてしまうような、不思議な気分になります。

こんな感じで、北朝鮮ならではの不思議な気持ちをここで感じます




楽しみ方3.意外にクオリティの高い隣の歴史記念塔を見てみる

金日成・金正日銅像の両脇には、二つの記念塔があります。

向かって左側は抗日パルチザン闘争(金日成が日本の占領に反対するために起こした闘争、北朝鮮国内ではこれのおかげで日本の占領が終わったことになっている)の歴史を表現した記念塔。

「北朝鮮の建国」を記念しているので、旗は北朝鮮の国旗です。

向かって右側は朝鮮戦争(現在停戦中だが、北朝鮮国内ではアメリカと南朝鮮連合軍が先に攻めてきたのを金日成が撃退し、勝ったことになっている)の歴史を表現した記念塔。

「社会主義の完成」を記念しているので、旗は朝鮮労働党の旗です。


「この人は兵隊さんを贈りだす奥さんかな?」とか「ラッパの人、なんか嬉しそうだな」とか、銅像を楽しめます。

そして、この像、クオリティがかなり高いのです。


世界中にある似たようなクオリティが低い銅像だと、この手の銅像は顔も子供が作る粘度細工みたいにいい加減で、どれも似たような服を着てたりします。


これは抗日パルチザン(1945年に終戦とともに終了)と、朝鮮戦争(1953年に停戦協定)の時代の差を反映させて、銅像の人が着ている服や、持っている武器も少し違います。

抗日パルチザンのほうが少しボロい服・持ち物なのです。


こんな感じで、銅像の人を観察してみたり、銅像自体の意外に高いクオリティを楽しんだりして楽しみます。

北朝鮮の観光スポットの口コミはトリップアドバイザーでも調べられます。
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